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新鮮! 懐かしい? じわり広がる「量り売り」

 何かと話題となったレジ袋有料化だが、いまではすっかり定着した感がある。もはやエコバッグは外出時のマストアイテムとなった。背景にはSDGs、プラスチックゴミ問題に対する日本人の意識の高さがあるからとも言える。

広がる量り売り香水サイト

 こうしたなか広がっているのが、店頭での量り売りだ。量り売りとは、店頭でお客が求める商品をお客が必要な量だけ、量って売る方法。身近なところでは、商店街やデパ地下などの精肉店や惣菜店、精米店などで行われている。
 一昔前、昭和時代の日本では、野菜以外の米、味噌、醤油、お茶、日本酒などの日用食料品は量り売りが基本だった。しかし、戦後高度経済成長期に入るとモータリゼーションが浸透し、駐車場を備えた郊外型のスーパーマーケットが各地に広がり、持ち運びに便利な小型の瓶やプラスチックボトル、ペットボトル、レトルトパッケージ、プラスチック惣菜容器などが普及すると量り売りは次第に姿を消していった。食品のパッケージ化は衛生的にも保存性にも優れているので、普及をさらに後押しした。
 ガソリンを使う自動車とアスファルトなどの交通インフラ、プラスチックを使った容器の発達、つまり石油消費の拡大が量り売りスタイルを店舗から消していったとも言える。
 それが脱炭素、脱プラスチックゴミの流れを受けて、再び店頭に戻ってきた。それだけでなく、いまや量り売りは食品以外でも日常化しつつある。
 たとえば、香水。気に入った香水でも、サイズが大きいボトルしかなくて購入を断念したり、逆に背伸びをして買ってしまい、後で余らせてしまうこともある。それが量り売りであれば、気に入った香りを少量ずつ購入し、気分や場面に応じて楽しむことも可能になる。
 香水の量り売りは通販サイトと実店舗で行われている。通販サイトでは有名ブランドの香水が1mlから購入でき、ブランドにもよるが1mlを¥100から買うことができる。注文サイズに応じた専用の容器を無料で提供し、店によってはアトマイザーと呼ばれる香水の噴霧器がついてくる。量り売りの店はランニングコストの安い通販サイトが中心だが、大都市圏では東京・新宿にある「THEKAORI BAR FINCA」、東京・池袋の「メルー」など、実店舗もいくつか現れている。また通販では、サブスクリプションも行っているところがあり、数百種の香水から数種の香水を定額で楽しむことができる。

昔「量り売り」、今「バルクショップ」

 量り売りで増えているのがオーガニックフードなどを扱う店だ。
 大阪の「fu tai〈フウ・タイ〉」はナッツやスパイス、ハーブ、豆類、はちみつ、チョコレートなどを扱う。東京・西国分寺にある「nue by Totoya」は、乾物や穀物、ナッツ類、ワインやパスタ、ドライフルーツなどのオーガニック食品を扱っている。また世界中からオーガニックな食品を輸入販売している全国展開の「FAREAST BAZAAR」ではドライフルーツやナッツ、焼き菓子、塩、ジェラートなどの量り売りをしているほか、同じく全国展開をしているオーガニックスーパーの「ビオセボン」でも、食品の一部を量り売りしている。東京・中目黒の日本初のナッツ専門店「Groovy nuts」では、ナッツの量り売りを行っている。
 神奈川県川崎市にある「バルクフーズ」は、オーガニック食品の量り売りスーパーで、乾燥野菜やドライフルーツ、ナッツ、はちみつやオリーブオイル、バターなどを量り売りしている。
「バルク」とは、塊やまとまりを表す英語で、欧米では日本の量り売り店のような店は「バルクショップ」として広がっている。
 量り売りは液体との相性がいい。たとえば東京・下北沢の「TAP&GROWLER」や東京・恵比寿の「LiquorShop Night Owl( リカーショップ ナイトオウル)」では、クラフトビールを量り売りしている。
 一方、環境に優しい洗剤や入浴剤、シャンプーなどを販売するニュージーランド生まれの「エコストア」では、洗剤を量り売りできる「リフィールステーション」という量り売りコーナーがあり、100ml単位で購入することができる。
 大手の小売でも量り売りはだいぶ浸透しており、「無印良品」や石鹸や入浴剤などを扱う「LUSH(ラッシュ)」、オーガニック系コンビニの「Natural Lawson」、輸入雑貨の「KALDI(カルディ)coffee farm」、アウトドアショップの「パタゴニア」、「JA(農協)」などでも量り売りを展開している。
 こうした量り売りショップは、全国各地で広がっており、古くて新しいライフスタイルとして、昔ながらの量り売りの代表である精米店、味噌店、豆腐店なども注目されているようだ。
 東京・銀座の松屋銀座店の「職人醤油」では、密封できる容器を持参すると、約80種の醤油から量り売りをしてくれる。また東京・亀戸にある「佐野みそ」では、60種の味噌を量り売りしている。
 量り売りは、プラスチックゴミ対策、SDGsの視点から注目を集めたが、少量でいくつも組み合わせることができたり、自分の欲しい分だけ購入できたりする、個客ニーズに合った優れた販売方法でもあるようだ。

【参考】
●「ダイヤモンド・オンライン」サイト●「LUSH」公式サイト ●「PR TIMES」●「ONE EARTH OUR EARTH」サイト●「eco store」公式サイト ●「BIOCe BON」公式サイト ●「VOGUE」公式サイト ●「香りハピネス」サイト ●「Far EastOnline Shop」 ●東京新聞 ほか

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