脱プラスチックで勢いづく紙業界 コロナで逆戻りか??
日常生活のなかから排出されるプラスチック製品が世界的な問題となっていることはご存じの通りだ。いまやスーパーやコンビニなどに買い物に出掛ける時には、マイバッグ持参が「ニューノーマル」となっている。
こうした脱プラの社会動向を受けて、活気づいているのが、紙業界。この10数年、職場のデジタル化の影響で需要が落ち込んでいた製紙業界にとってはまたとない追い風だ。
少し前は、カフェチェーンやファストフードで紙コップや紙ストローが話題となったが、いまやそれも違和感なく受け入れられているほか、技術的な改良も進んで、耐久性も良くなってきている。
紙ストロー以外にも容器・バッグの脱プラ化が進み、代替の紙製品化が進んでいる。
例えば日本製紙は、シャンプーや消毒液といった浸透性の高い液体を入れることができる世界初の詰め替え用紙パック「SPOPS」を開発。また、ストローなしで牛乳などが飲める学校給食用紙パックも開発している。
また化粧品大手のロレアルは、世界初の紙製化粧品チューブを開発し、順次、ボトル類を紙製に切り替えていく。
牛乳容器などで圧倒的なシェアを誇る日本テトラパックは、中の液体のにおいが移りやすいとされていた紙パックの内側に、特殊なアルミフィルムを貼ることで「におい移り」を解消 (アセプティック加工処理)、ミネラルウォーターなどに利用されている。 三井農林から発売された「ナチュラルウォーター」はその1つ。このほかハバリーズが発売した「ナチュラルウォーター」にも使用されている。ちなみにこの商品は、1本につき1円が『世界自然保護基金(WWF)』に寄付される仕組みとなっている。
こうしたストロー不要の紙パックは、お茶やコーヒー飲料でも進んでいる。脱プラだけでなく脱PETも進めているようだ。
このほか、大日本印刷では、チャック付きの紙容器を開発した。容器の形は全体的に立方体で、陳列棚に重ねて陳列もできる。上部にチャックをつけ、開閉できるので、インスタントコーヒーなどの粉体やシリアルや調味料などのパッケージに利用される。
食品包装資材商社のヨネヤマは、弁当箱としてでも使える紙製のワンウエイ容器(パルプモールド容器)「BMP」シリーズを開発展開、カフェやフードコートなどの事業者、弁当惣菜販売業者などへ提供している。防水加工がしてあるため、BMPシリーズはご飯などの水分がある食材でもふやけることがなく、またこびりつくこともないなど、紙製の弱点を克服している。
一方、2025年までにすべての商品の包装材をリサイクル可能な素材に切り替えるという目標を掲げるネスレ日本。看板商品の「キットカット」の大袋の外装を凸版印刷などと開発した紙パッケージへと変更した。ネスレ日本では今回の紙パッケージへの移行で、年間約380トンのプラスチックの削減を見込んでいる。
脱プラスチックのうねりを捉えたスタートアップも増えている。東京農業大学出身の若者から生まれた合同会社HAYAMIは、草を使ったストロー「HAYAMIの草ストロー」を開発した。この草ストローは、東南アジアに生息するカヤツリグサ科のレピロニアと呼ばれる植物が原料。無添加・無農薬・保存料不使用の完全自然由来の製品のため、使用後は道端の草木と同じように分解され自然に還すことができ、使用後は家畜のエサや肥料、ヒンメリの製作などの活用方法が期待されている。2020年4月に販売以来、5 ヵ月で100店舗まで広がっている。
このほか道の駅「奥河内くろまろの郷」内にある「むささびパン工房」では、NPO法人里山ひだまりファームが生産した小麦の茎を利用した「麦ストロー」の開発・製造を実現。訪れた利用者に提供している。
SDGs認知の広まりや、サスティナブルな社会実現への関心の高まりなどから世界中でこうした脱プラの動きが進んできた。ただここに来て、新型コロナの影響もあり、その動きに停滞感が生まれている。
経済産業省の調べでは、2020年4月の食品トレー等に使われる発泡製品の国内生産は、前年同時期比で6.7%増。レジ袋など放送用フィルムの国内生産も3.5%増えている。これは飲食店の営業自粛で持ち帰り食品の需要が伸びたことで、レジ袋や包装材の消費が増えたことが考えられる。
プラスチック製包装資材の代替品の普及が、まだまだ追いついていないということもあるだろう。
世界中で海に流れ込んでいるプラごみは、年間約800万トン以上。これを削減するためにも消費者が、より積極的にプラスチック代替品を使うことを意識していきたい。