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コロナにもめげず、否、コロナだからか― 増えている進化系ビジネス!

すっかり業務のリモート化、オンライン化が定着しつつある日本のビジネス。ただ業界によってはまだ温度差があるようだ。ニューノーマル「新状態」という言葉も定着しているが、温度差を含めてのニューノーマルなのかもしれない。

ニューノーマルの形もさまざまだが、当然ながらその前から変化の兆しもあった。こうした業界の変化の先端を見せてくる業態やビジネスモデルを、最近では「進化系」といった言葉でくくることも多い。

そこで今回はそんな業界ごとの進化系をまとめてみよう。

進化系ドライブスルー

コロナ禍ではできるだけ人との接触の機会と時間を減らし、飛沫が飛ぶ空間を共有しないことに尽きるが、そういったニーズの高まりから注目されているのが、ドライブスルーだ。

ドライブスルーと言えば、マクドナルドやスターバックスコーヒーが知られているが、最近は青果店や鮮魚店にもドライブスルーがみられるようになった。東京大田区にある㈱フードサプライは、かねてよりフードロス解消に向けたビジネスに取り組んできたが、その1つの答えとして、ドライブスルー形式で野菜を販売するビジネスを全国で展開。その名も「ドライブスルー八百屋」。

契約農家や自社農園で栽培された旬の野菜をパッケージ。客はネットから予約すると全国複数で開催される独自の市場に車で赴き、車から降りずに注文した野菜を受け取ることができる。当初はコロナで出荷できなかった米や野菜、卵などの商材をパッケージした5000円の「もったいない野菜セット」を中心に東京物流センターと千葉センター物流で販売していたが、次第にラインナップを充実させ、米なしの3500円のセットや、母の日にカーネーション、父の日のひまわりなどを無料で添えたセットなども販売。最近では「串カツ田中」など、他のチェーン企業や、地場企業とのコラボも増えている。

驚くべきはそのスピードで、4月16日に緊急事態宣言が発布された4日後の4月20日事業を立ち上げてからは、次々と各地方に展開。定期的ではないものの北海道から九州の主要都市で市場が開かれている。

このドライブスルー形式は、他業種にも広がっており、外食向けの卸業のプライムミート㈱が、東京と長野で「ドライブスルー肉屋」を、同じく外食向けのかいせい物産㈱が5月に「ドライブスルー魚屋」を千葉で開始している。

こうした流れは、コロナ禍のいまだから受けているのか、それとも一つの業態としてポストコロナの時代でも続くのかは不明だが、他業界とのコラボなどプラスアルファの魅力が増えて、「コト消費」にシフトすれば、続く可能性はある。

進化系立ち呑み、進化する屋台

コロナか否かを問わず、飲食店は常に進化していないと生き残ってはいけない。デフレ基調が続いていたため、飲食業界のトレンドはコスパのいい高級料理店が話題を呼んできた。フレンチが立ち食いとなったり、握り寿司が立ち食いとなる例も少なくない。このトレンドを後押ししたのが「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」など「俺の」シリーズを手掛ける「俺の(株)」だ。現在イタリアンやフレンチだけでなく、スパニッシュ、焼き鳥、うなぎ、グリル、焼き肉、おでん、そばなどジャンルが拡大中だ。ただ中には着席じゃないと落ち着かないということもあり、着席可能な店舗も増えている。

こうしたトレンドは他にもあり、「進化系」として話題を呼んでいる。2018年東京の日比谷ミッドタウンにオープンした立ち呑み「三ぶん」もその1つ。もともと開発前からあった店で、食通と左党の間では知られていたが、開発後はミッドタウンの一角に店を開いた。

高級ブランドひしめくミッドタウンのなかでは、10人も入れば満席状態となる店とは思えないほどの旬の高級食材を最高のネタにして提供してくれる店として、知られている。

立ち呑み・立ち食いではないが、進化系が進出していると話題になっているのが、博多の屋台である。

博多の屋台は近年、従来のおでんやラーメン、焼き鳥といった定番ものから、スペイン風バルやフレンチ、高級和食店、高級魚ふくの専門店など、バラエティ豊かな屋台が増えつつある。これは管理者である福岡市が新規参入者を公募したりして、新陳代謝を促す狙いがある。キャッシュレス化の流れを受けて、クレジット払いなどに対応している店も増えている。こうした対応により、博多の屋台には若い女性などの姿が見られるようになって、イメージもかなりアップしているようだ。

お寺も進化。カフェ運営からなんと婚活ビジネスまで

コロナ禍では対面で行われるビジネスのほとんどが顧客獲得に悩まされている。たとえばお寺もそうだ。400年の伝統を誇る東京の築地本願寺では、お寺で法要ができない檀家向けにオンライン法要を行っている。そこまではよくある話だが、同寺では、Youtube
を使った一般向けのオンライン法話なども行う。それだけでなく、近年の、とくに若者の「お寺離れ」に対応し、境内に大掛かりなインフォメーションセンターをつくり、そのなかにカフェをオープンさせている。朝8時開店のカフェでは朝食セットが提供されるが、精進料理をベースにしたもので、ヘルシーさと種類の豊富さ(18種)で、「インスタ映え」すると話題になっている。

極めつけは、「築地の寺婚」と題した婚活マッチングサービス。一般の会員制婚活マッチングサービスと同じで、専門のコンシェルジュがおり、会員から条件を聞き出し、デートなどをセッティングと結婚に向けての細かなアドバイスを行っている。

お寺でなぜ?という疑問も湧くが、お寺側としては新しい層に将来の檀家、あるいは、法要などの顧客取り込みの仕掛けであり、利用者としては、お寺であることからほかの婚活サービスより、登録会員がしっかりしているイメージがあり安心できるなどの声があがっている。

ほかにも東京葛飾区にある「證願寺」ではプラネタリウムセットのなかで法話を行っている。また岐阜県の円光寺では、毎年夏に境内を使った「浴衣ファッションショー」を開催、福井県の「照恩寺」では、境内にプロジェクションマッピングを使った映像を流し、テクノ音楽に乗せた「テクノ法要」を行っている。

もはや本屋は本を探しに行くところから、食事をしながら本を読む場所へ

進化系の一つの方向としてあるのが、別業種のコラボから生まれる新業態だ。最近ではコラボと呼ばず、「マリアージュ」という表現を使ったりする。

とくに顕著なのは書店。書店+カフェはだいぶ一般化しており、例えば、東京神田の書店街の老舗、「東京堂」は、店内に「Paper Back Cafe」が併設されており、購入した後そのままカフェでくつろぐことができる。また岩波ブックセンター跡地に誕生した「神保町ブックセンター」も軽食が楽しめるカフェとワーキングスペースが用意されている。

東京・六本木にある「文喫」は、書店でありながら、入場料がかかる。しかも1,500円とかなり高額。そのかわり店内ではコーヒーが飲み放題で、気に入った本をゆっくり読める閲覧室、グループで打ち合わせなどができる研究室などのほか、軽食が摂れる喫茶室がある。

つまり1日をここで過ごし、仕事もできるのだ。また文喫は、いわゆるベストセラーなどはおかず、通常の書店では手に入りにくいレアな業界本や専門書、美術書などを中心に取り揃えている。ちょっとした調べ物なら、ここで完結してしまう。

東京・池袋の地下鉄直結のショッピングモール「Esola」にある「本と珈琲 梟書茶房」は、タイトルからイメージできるように同じブックカフェでもレトロな雰囲気を漂わせるスポットとして知られる。約1,000冊の本を自由に閲覧でき、タイムスリップした
ような空間でじっくりコーヒーや軽食とともに味わうことができる。

もはや書店の機能は単に本を買うだけでなく、買うまでの時間と空間を楽しむ存在に変わりつつあるようだ。となれば、書店に求められるのは居心地良い空間づくりで、「こんな空間でこんな本探しができる」ということがポイントになってくる。

東京・玉川の二子玉川ライズSCにある蔦屋家電には「SOLSO HOME Futako(ソルソホームフタコ)」がある。蔦屋家電の本棚とカフェ&バーの「GOODMEALSSHOP 二子玉川店」に隣接し、さまざまな観葉植物が天井から壁、テーブルや椅子などを取り囲み、自宅でくつろぐような体験ができる。

北海道の小さな書店の大ヒットサービス「一万円選書」

少子化やネット社会の伸長もあり、出版界はずっと下降線をたどっている。とくに地方書店の生き残りは厳しいものがある。こうしたなか、全国から注目されているのが、北海道砂川市にある「いわた書店」だ。ここでは忙しくて本屋に行けない、最近同じような本ばかりで出会いがないなどの読書難民に、1万円でその人だけの本をセレクトして送ってくれる「一万円選書」サービスを行っている。A4版3枚の詳細な「カルテ」をもとに、店主の岩田徹さんがお薦めの本を一万円分選ぶ。

カルテには職業、年齢、それまでどんな本を読んできたかといった読書歴などのほか、家族構成、最近気になっていることや、人生で一番うれしかったこと、苦しかったことなどのほか、何歳の頃の自分が好きですか、あなたにとって幸福とはなんですか? といった、かなりディープな設問が並ぶ。きっかけは本好きの知人に頼まれたことだ。その後口コミなどで月数人まで広がったが、ある時深夜番組で紹介されると、一気に数百人がオーダー。今では3000人待ちになっているほどに。

本は大人になれば、なんとなく「読んでおいたほうがいい」と思いながらも、セレクトする時間と手間をかけることができないという現代人の事情が背景にありそうだ。事実、Amazonは過去の注文歴からレコメンド機能を使って本との出会いを増やし、潜在的な消費を喚起している。

本来、書店に求められているのは、本のソムリエとしての書店員の役割と、会計カウンターとは別のコンシェルジュカウンターなのかもしれない。

屋形船の異彩、ななつ星で知られる
水戸岡鋭治氏監修の安宅丸(あたけまる)

コロナ禍はさまざまな業界に想定外の影響を与えた。もっとも影響が深刻だったのは観光業界だが、とりわけ悪印象を与えてしまったのが屋形船だ。今年は東京五輪が開催予定だったが、東京の屋形船の営業期間は夏の書入れ時が外されていた。よって、その前の春先が勝負でもあったが、その出鼻をくじいたのがコロナだった。

その後、3密を避けるような対策で徐々にではあるが営業を再開してるところもある。実は屋形船もいろいろ進化している業態の一つだ。屋形船は飲食を伴うエンターテイメント空間であり、そのため食事以外の魅力づくりに力を注いできた。なかでも異彩を放っているのが、「安宅丸」。江戸時代、徳川家光が建造させたという船のイメージを再現したもので、船の外観のいたるところに三つ葉葵の御紋が施されている。船内は九州新幹線や豪華観光列車「ななつ星」などを手掛けた水戸岡鋭治氏が、往時の絢爛な設えを現代に再現。また運行中は劇団四季出身者などから成る「徳川お持て成し役者」が、船内の案内やパフォーマンスを繰り広げる。

いまは世界中が試練の時だ。この試練のなかから新しい、工夫や知恵、イノベーションが起こり、きっと必ずあちこちで業態進化や市場が広がるはずだ。

これからもさまざまな業界の進化に期待したい。

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