これだけは押さえておきたい、エグゼクティブのビジネス会話力、スピーチ力
目次
- 現代はエグゼクティブの会話力、スピーチ力が問われる時代に
- ジョブスさんに負けず劣らずのビル・ゲイツさん
- 肩書きと話し方がマッチしていない人が多い日本人
- 「面白い」は果たして好印象・高評価か?
- 「与えたい印象」を決める3つの因子
- 3つの因子には重い印象と軽い印象がある
- 日本の実業界は、「重さ」を求めている
- 日本の実業界は、「重さ」を求めている
- 話の説得力は「内容」「態度」「声」で決まる
- 舌の筋力が喋りを変える
- 具体的に丁寧に、正確に話す
- マスメディアもネットも引用元が重要
- 期待と予測を混同しない
- 漢字を読み間違えてバッシングを受けた麻生太郎元首相
- 瞬きは動揺の証明。できるだけ抑える訓練を
- 常に笑顔で話す必要はない
- 重要なところはゆっくり話す
- 話すことより「伝え方」に気を遣う
- 話す内容に大きな柱を3つ持つ
- 上司は部下や若年者を気遣う
- 共通項が多ければ多いほど、人はその人に関心を持つ
- 【newcomer&考察】 認める?認め無くない?! でも確実に「eスポーツ」時代がやってくる!
現代はエグゼクティブの会話力、スピーチ力が問われる時代に
一般に欧米の企業トップはとにかく、スピーチ力が優れていると言われる。
たとえばアップルの創業者である故スティーブ・ジョブズさんなどは秀逸で、その扇情的なスピーチは際立っている。そのスピーチ集が書籍として出ているほどだ。
たとえば自由な場を求める発言では、かつて「海軍に入るくらいなら、海賊になったほうがいい」と言い放ったことがある。
人に縛られることを嫌い、自由な発想を求めたジョブスさんらしい名言だ。
また、成長著しいアップル社がさらなる飛躍を求めてグローバル経営を任せられる人財として、当時ペプシコ社のトップであったジョン・スカリー氏を招聘する際に放った言葉が、彼らしい言葉として知られている。
「残りの人生を”砂糖水”を売って過ごすのか?世界を変えたくはないのか」
当時のアップル社は、新規性のある製品をどんどん発表していたが、ペプシコーラで知られるグローバル企業「ペプシコ社」とは比較にならなかった。そのトップに人間に対して、その商品を「砂糖水」とまでこき下ろしたのだ。自社製品をそこまでけなされたら、「さっさとそのドアから出ていけ」と怒鳴りつけるのが普通だろう。しかしスカリーさんはこのオファーを受けた。それほど、ジョブスさんの言葉には説得力と煽情力があったからだ。
ジョブスさんに負けず劣らずのビル・ゲイツさん
あるいは同じIT界のカリスマ、ビル・ゲイツさんもそうだ。
故人となったこともあり、同じIT界ではジョブスさんの名言がよく知られているが、ゲイツさんも魅力的な言葉を数多く残している。たとえば、「成功は最低の教師だ」。
「失敗に学ぶ」という言葉があるが、それを彼独自の激烈な言葉で言い換えている。もちろん成功が嫌いなわけではない。むしろ彼らは成功か失敗かを物事の価値基準に置いている。
「毎日毎日『勝ちたい』という気持ちで出社しなければならない。切羽詰まった時にこそ、最高の能力を発揮する」といったように。
肩書きと話し方がマッチしていない人が多い日本人
果たしてこういった人たちは会話、スピーチの才に恵まれた稀有な人たちなのだろうか。確かにそういった面もあるかもしれない。しかし才能の有無に限らず、企業のトップに高い会話力、スピーチ力が求められていることは事実だ。会話力、スピーチ力の高い人はそれだけビジネスチャンスを広げることになるからだ。
とりわけトップの会話力、スピーチ力は重要だ。一般社員や部課長クラスの人が話すより、大きな効果を発揮するからだ。
人の上に立つ人。部長や役員、企業トップに求められる会話力、スピーチ力にはどのような要素が求められるのだろうか。
元NHKアナウンサーで、人を引きつけるスピーチについて全国の大学で講義を持つ矢野香さんは、政治家や企業トップの人々には「肩書きと話し方がマッチしていない人が多い」と指摘する。
どんなところか。たとえば記者会見などでよく目に付くのは、過剰なジェスチャーや瞬き、体のどこかを動かす癖、表情、姿勢、発言の仕方、悪い話癖などだそう。
矢野さんはエグゼクティブと呼ばれる人たちが、人前で話す立場になったら心がけてほしいこととして、まず「他人に与えたい印象を決めること」を挙げる。
印象を決めるというと、前述したスピーチのカリスマたちをイメージしてしまう。だが自分が持たれている印象を無視して、そういったカリスマのものまねをしても滑稽になるだけだ。
印象を決めたいなら、まず己を知ることだ。自分の第一印象を知ってから、与えたい印象を決めるのだ。
「面白い」は果たして好印象・高評価か?
どうすればいいか。自分の第一印象を知るには、初対面やあまり面識のない人から自分の印象を聞いてみるのが手っ取り早い。効果的なのは、何か人前で話をした後でアンケートを取るのが一案だろう。アンケートまでいかなくても「どうだった?」とヒアリングするだけでも大きな収穫はある。
ただアンケートでは自分の印象が多角的に知ることができるが、書かれた印象を読み取る時には注意が要る。
矢野さんによれば仮に「面白い人」「楽しい人」という印象が出たりした場合、素直に喜んではいけないと語る。こうした印象には言外に「意外と軽い」という意味が含まれているからだ。もちろん話した内容が楽しく、笑いを取るようなものであれば、そういった印象も出てくるだろうが、かと言ってそれを鵜呑みにしてはいけないのだ。
「与えたい印象」を決める3つの因子
自分に対するイメージをしっかりつかんだら、次に自分が与えたい印象を決めていく。
「与えたい印象」と言われると茫漠としたイメージを持つかもしれない。だが矢野さんによれば、分析していくと「3つの因子から成り立っている」いう。
1つの因子は「親しみやすさ」。「話しかけやすい」「優しい」「親切な」「明るい」「元気な」「外交的な」「面白い」といったキーワードだ。
2つめは「活動性」。「堂々とした」「意欲的な」「積極的な」「鋭い」「リーダーシップのある」「強い」など。
3つめは「社会的望ましさ」。「信頼出来る」「分別のある」「きちんとした」「誠実な」「安心できる」「知的な」「大人っぽい」などだ。自分の印象を決めていく場合には、この3つの因子のどれを強く打ち出すかを考えるべきという。
矢野さんによれば、さらにこの3つの因子に声の出し方を工夫することで印象が決まるのだと語る。たとえば「親しみやすさ」を強調したい人は、「やや高めの声でゆっくりと話す」と良い。
社会的望ましさ」を狙う人は、「低めの声でゆっくり話す」。
「活動性」を重視する人は、「高めの声で速めに話す」ようにするといい。
3つの因子には重い印象と軽い印象がある
3つの因子には、さらに重い印象、軽い印象が加わる。しかしそれは必ずしも重いから社会的望ましさが強調されるのではなく、また軽いから親しみやすい、というわけではない。
一般に人前で話す時には、「大きく通る声」、「聞き取りやすい発音」、「論理的な構成」が求められる。だが矢野さんによれば、目指す印象を作り上げていく上では、必ずしも当てはまらないという。
目指す印象によっては、逆に小さい声や、あまり明瞭な話し方をしないほうがいい人もいる。また論理的でなくとも、納得できる話し方があるともいう。
日本の実業界は、「重さ」を求めている
目指す印象を作っていく際に考慮するものはまだある。それは自分の属性だ。
男性か女性か。年齢は30代か、40代か50代か。経営者らしくしたいのか。エグゼクティブと見られたいのか。業界や会社での肩書きなど属性を見ながら、理想の印象を作っていくのだ。
オバマ大統領やスチーブ・ジョブズさんのようなスピーチは、誰もが憧れるだろうが、だからと言っても誰もが目指せるわけでもないし、似合うわけでもない。
ICT業界やファッション業界では、男女ともに若い世代のトップやエグゼクティブが多いようだ。若さや積極性、歯に衣着せぬ言動はこうした人々の魅力であり、強みかもしれないが、企業トップ、エグゼクティブであれば、あまり軽すぎるような話し方は慎みたいところだ。
とくに日本の実業界では、若いとなかなか信用されにくい面があるのも事実だ。必要以上に「軽く」見られる話し方や言動は避けたほうがいい。
もちろん若い世代でも実年齢以上の落ち着きや重みを感じさせる人もいる。
一般的に年を重ねて、肩書きが変わればそれに応じた「重さ」が必要になってくる。
重さは信用のバロメーターになる。必要以上に重さを気にすることはないが、少なくとも肩書きのある人が、他人に何かを話すということは、信用をベースに行わなければならない。若さと軽さは似て非なるものだ。
日本の実業界は、「重さ」を求めている
目指す印象を作っていく際に考慮するものはまだある。それは自分の属性だ。
男性か女性か。年齢は30代か、40代か50代か。経営者らしくしたいのか。エグゼクティブと見られたいのか。業界や会社での肩書きなど属性を見ながら、理想の印象を作っていくのだ。
オバマ大統領やスチーブ・ジョブズさんのようなスピーチは、誰もが憧れるだろうが、だからと言っても誰もが目指せるわけでもないし、似合うわけでもない。
ICT業界やファッション業界では、男女ともに若い世代のトップやエグゼクティブが多いようだ。若さや積極性、歯に衣着せぬ言動はこうした人々の魅力であり、強みかもしれないが、企業トップ、エグゼクティブであれば、あまり軽すぎるような話し方は慎みたいところだ。
とくに日本の実業界では、若いとなかなか信用されにくい面があるのも事実だ。必要以上に「軽く」見られる話し方や言動は避けたほうがいい。
もちろん若い世代でも実年齢以上の落ち着きや重みを感じさせる人もいる。
一般的に年を重ねて、肩書きが変わればそれに応じた「重さ」が必要になってくる。
重さは信用のバロメーターになる。必要以上に重さを気にすることはないが、少なくとも肩書きのある人が、他人に何かを話すということは、信用をベースに行わなければならない。若さと軽さは似て非なるものだ。
話の説得力は「内容」「態度」「声」で決まる
では軽い話し方、重い話し方の分かれ目はどこにあるか。
矢野さんは3つのポイントを挙げる。それは、話す「内容」、話す「態度」、話す「声」である。
舌の筋力が喋りを変える
話す声について先ほど述べた通りだが、いざという時に声がきちんと出て、言葉がしっかり言えるように舌の筋力を鍛えておく必要がある。と言ってもしゃべりのプロでもない限り、舌の筋力などふだん気にしないものだ。
矢野さんはそのチェックの仕方として、次の方法を挙げる。
1つは巻き舌によるチェック。舌先を巻くようにして「ルルルルルル…」と勢い良く音を出す。
もう1つは、舌を出したり引っ込めたりしながら「レロレロレロレロ…」と繰り返す。
この時、ルルル、レロレロがうまく言えないようだったら、それは舌の筋力が衰えている証拠だ。語尾がしっかりしなかったり、特定の語に躓いたりしたら要注意。ルルル、レロレロが素早く言えるよう、繰り返して練習していくと日本語の一拍一拍がはっきり明瞭に聞こえるようになる。
具体的に丁寧に、正確に話す
話す内容について重要なのは、次の3点と言える。
①具体的に発言する
②事実と感情を分けて表現する
③言葉を正確に使う
1の具体的に発言するというのは、固有名詞や数字をしっかり出して話すということだ。わかりやすくしようとして、ざっくりとした数字や略称をつかったりするケースがあるようだが、固有名詞をきちんということや、パーセンテージや単位をきちんということが、具体性を高め、信頼性を高める。
またデータについては出典や年度などをしっかり述べる必要がある。「この前、たまたま見たテレビで言っていたのですが」とか、「3日前の新聞に出ていました」など曖昧な表現では、その話の根拠が希薄となる。
引用する際には、せめて「何という番組で何という人が言っていたか」を示すべきだろう。また新聞でも3日前だけでなく、何新聞に載っていたかをきちんと言うべきだ。自分が読んでいる新聞が必ずしも聴き手が読んでいるとは限らないからだ。
紙の情報であれば、その切り抜きやその画像を提示するのが理想だ。最も説得力ある情報は、自ら体験したことだ。その場合でもいつ、どこで、誰が何をどうしたのか。何が起こったかといういわゆる5W1H形式でしっかり伝える。
マスメディアもネットも引用元が重要
注意したいのがネットからの引用だ。ネット上にはさまざまな情報が飛び交っており、噂の類も少なくない。だからと言ってネット上にある情報がすべて使えないというわけではもちろんない。新聞社や伝統ある雑誌社、官公庁、大学や研究機関などから出されている情報はかなり確度の高い情報なので、出典をしっかり明示して利用すれば、信用性は高まる。
期待と予測を混同しない
矢野さんはまた、こうしたデータや情報に関して、推測は入れないように注意を促している。どういうことか? たとえば現在までの売上げが伸びていることを表現する場合、「今後も伸ばすことができそうです」といった推測の言葉は使わないようにすることだ。
このような場合は「売上が伸びると期待しています」、「売上を伸ばすことを目標とします」といった言い回しに変える。目標はあくまでも目標であり、期待は期待であるので、推測にはならないのだ。2つめの「事実と感情は分けて話す」ことも、わかっているようで実際にはなかなかできていないことだ。
ポイントは、事実は淡々と話し、そこに形容詞や副詞を使わないこと。事実のデータに対して「とても」「すごく」「絶対に」「やっと」といった強調する言葉を使ってしまったり、「良い」「悪い」「多い」「少ない」「成功」「失敗」など評価を入れてしまうと、その評価が独り歩きしかねない。
たとえば、「今年2月10日に、東京有明にある東京ビッグサイトで行われた○○フェアには、主催者の発表で、開催4日間で52万5432人が来場したということです。これは前回7月20日に同じく4日間で行われたフェアに訪れた50万2352人より2万3080人増えています」という言い方があったとしよう。
これを「この2月上旬に東京ビッグサイトで行われた○○フェアでは、あいにくの雨模様のなか、前回よりも約2万人多いたくさんの来場者が全国各地から集まり、大成功のうちに最終日を迎えました」という言い方で伝えた場合はどうだろう。
前者はイベントの場所や名称、来場者数など情報源をもとに伝えているが、後者はただ前回行われた同じ名称のイベントより約2万人増えたことを、大成功と評価している。この場合、評価したのは、主催者側が言ったのか、話し手本人の評価なのかが曖昧となっている。
評価をする場合は、あくまでも個人的な感想として「成功だった」「失敗だった」と語るべきで、あたかも関係者の多くがそういう評価をしているような表現は避けるべきだろう。
漢字を読み間違えてバッシングを受けた麻生太郎元首相
3の「言葉を正確に使う」ということも、案外わかっているようで徹底されていないチェックポイントだ。
せっかく内容の濃い説得力のある話でも、使っている漢字の読み方が違っていたり、略称を間違えていたのでは、その信ぴょう性も信頼も失いかねない。
ニュースや新聞で話題となっている事柄については、テレビやラジオで正確な発音を確認しておくようにし、疑問が湧いた表現や単語はこまめに辞書にあたる姿勢が必要だ。
余談だが、自民党の麻生太郎元首相は、首相時代「未曾有=みぞう」を「みぞうゆう」、「踏襲=とうしゅう」を「ふしゅう」、「頻繁=ひんぱん」を「はんざつ」などと誤読を続けたところ、全国紙や週刊誌などから「日本語の読めない首相」とバッシングを受け、2009年の11月25日に日本民間放送連盟が行ったアンケートで「あなたが最も怒りを覚えた有名人」の第2位となったころがある。
政策能力や政治家としての資質は別にしても、やはり一国の総理が義務教育で習う漢字を読めないことは、国民の不安を煽ることにつながりかねない。肩書きが上がれば上がるほど、世の中の目は厳しくなることも付け加えておこう。
なお読み方については、NHK放送文化研究所が発行している「NHKことばのハンドブック」が参考になる。
瞬きは動揺の証明。できるだけ抑える訓練を
次に話す態度。こちらも肩書きが上がるほど注視される。とくに女性は話し手の服装や態度、表情を細かく見ているものだ。
ある心理学の実験によれば、相手に印象を与えるものは、
1「その人の声」
2「顔」
3「服装」
4「体格」
の順で影響を与えるという。
人の印象や信用は、言葉や話す内容だけで決まるわけではない。
企業の記者会見などを見ていると、机の上では神妙そうな態度を見せていても、足が組まれていたり、貧乏ゆすりを起こしていたり、意外と足元の動きや下半身の態度で、心の中が見えることがある。
もちろん腕を組み替えたり、体を左右に揺らしたり、女性であれば髪を何度も触ったりするのは、見ていて気持ちがいいものではない。
矢野さんは、とくに気になる話し手の癖として挙げているのが、「絶えず動いていること」。貧乏揺すりはその代表だが、それ以上に気になるのが「頷きと瞬き」だそう。
決して頷くことがいけないのではなく、「何度も」頷くことが問題だという。自分が話しながら、「うんうん」と何度も頷く。何度も「うんうん」と頷くのは、落ち着きのない人に見えてしまうのだ。
また一般に瞬きは嘘をついたり、動揺している時に頻繁に見られる現象なので、見ている人からすると、不安を掻き立ててしまう。
しきりに頷いたり、瞬きを繰り返す人はやはりトップやエグゼクティブとしての「重さ」を感じ取りにくい。
頷きは何度もするのではなく、1度だけ大きく上下に頭を振る。また瞬きは生理現象なので、全くするなというのは無理な話。でも瞬きは訓練すれば減らすことができる。
矢野さんは、自己紹介の冒頭で自分の名前を名乗る30秒、名刺交換時の自分の名前を名乗る30秒、相手の話を一所懸命聞いていると伝える30秒は瞬きをしないよう努力することを勧めている。
相槌の打ち方も重要だ。相手の話に関心を寄せるサインとして相槌を打つのはいいのだが、「なるほど、なるほど」、「あー、はいはい」と同じ言葉を繰り返したりすることは「軽い」態度として受け取られる。
長年身についてしまった癖はなかなか取れないもの。だからこそぜひ意識して改善してほしいところだ。
常に笑顔で話す必要はない
話す時の「表情」も重要だ。テレビ局のアナウンサーはニュースの内容によって表情や声を変えている。事故や事件のニュースでは、眉根にシワを寄せるような表情で声を落として伝えるかと思うと、スポーツなどで有名選手が優勝したり、音楽家が賞をとったりする話では、口元もほころび、声のキーも高くなっている。
話し手のプロの達意を身につけるということまでは言わないが、話すテーマによって表情を変えていくことは重要だ。
重要なところはゆっくり話す
もう一つプロの話し手が意識していることはスピードだ。
「わかるニュース」でいまや大人気となったジャーナリスト、池上彰さんは、民放のアナウンサーに比べてゆっくりとした口調に感じる。しかし本人の著書によれば「一般的な内容の部分は早口で話し、重要なところに差し掛かるとスピードを落としている」のだそう。
「噛んで含める」という言葉があるが、意識して緩急をつけることによって、聞き手にも内容が伝わりやすくなる。
話していて、どうも相手がついてきていないと感じた時は、少しスピードを落とすことも考えてほしいポイントだ。とくに大人数に対して話す時には気をつけたい。
話すことより「伝え方」に気を遣う
場馴れしていない人の場合、緊張のあまり、言葉も出なくなったりすることもある。
このような時は、話し方ではなく「話の伝え方、伝わり方に意識を向ける」ようにするとよい。
どう見られているか、という不安を抱くより、相手に伝わっているかに注意を向けることで、緊張が解けていく。また目の前にいる1人の人をターゲットにすると、10人でも100人でも楽に話せるようになる。
話をする時の「視線」も重要だ。講演や大会議室などで大人数を相手に話す場合は、なるべく視線を遠くに置き、そのなかの1人語りかけるつもりで話すといいとされている。
話す内容に大きな柱を3つ持つ
またスピーチ経験の少ない人は、話す内容をまとめることじたいが苦痛だったりするだろう。聞いた人が「良かった」と思われるスピーチにするにためには、やはり事前準備が重要になる。
とは言え細かくレジュメを書くのは大変だ。話がなかなかまとまらないような時は、言いたいことをいくつかにまとめておくとよい。聞き手のほうでも一度にたくさんの内容を言われても覚えられるものではない。でも3つぐらいであれば、途中で話が脱線しても、修正しやすいし、聞き手も記憶しやすくなる。
その代わり3つの柱については、話の冒頭と最後に繰り返すようにする。
また伝えたい内容を話の冒頭に言っておくことは、「つかみ」を取る上でも有効だ。
冒頭に「本日、皆さんに言っておきたいことは、3つです。1つは○○○について。2つめは▲▲▲について。3つめは◆◆◆について。この3つについてはぜひ記憶にとどめておいてください」と言っておき、最後に「本日、皆様にお話したことは、1つは○○○については■■だということ。▲▲▲については○○○だということ。そして◆◆◆は□□□だということ。この3つでした」
と締めくくれば、内容が整理され、聞き手の人も時間を無駄にしなかったと思うに違いない。
上司は部下や若年者を気遣う
大人数に対してスピーチする機会はエグゼクティブといえどもそう多くはないだろう。ふだんはやはりオフィスや得意先などで数名から1対1での会話が中心となる。
少人数で話す話し方と、講演や大会議室での話し方とは自ずと違ってくる。
その多くは部下や若い世代との会話が中心となるかと思う。実力のある上司は、とかく部下や若い世代に対して上から目線で、きつい口調になりがちだ。
きつい口調だとせっかく心を開いて話を聞こうと思っていても、その気が削がれる。
「文句があるなら実績を出してから言え」と言いたいところだろうが、そういう実績が出せないから、そのヒントやアイデアを聞きたいものなのだ。
何かを話すということは、何かのコンテンツを一方的に話すとうことではない。あくまで聞き手がいて、その関係性のなかで成立するもの。つまり本人が「上手に話せたか」で測るものではなく、上手に関係を築くことができたかで測るものだ。「話すのではなく、関係を築く」という意識が根底にあることが重要だ。
常に鼓舞するような話ではなく、時には昔の失敗談などを盛り込むことによって、部下や若い世代との距離が縮まり、話が伝わりやすくなる。
共通項が多ければ多いほど、人はその人に関心を持つ
これも余談だが、東京・銀座などの高級クラブで、ママさんなどに人気のある人はステータスがあって優秀なだけではなく、どこかに自信なさげな、弱さがある人とのこと。
人は完璧に思える人に意外な脆い面があったりすると、途端に魅力的に感じたりするもの。自分からは遠い人な壁があると思う人でも、いくらかの共通項があれば話に耳を傾けるものだ。それが自分が抱える悩みと同類だったりすれば、それだけで一所懸命に話を聞こう、付いていこうと思えるのだ。とかくカジュアルに流れるビジネスだが、肩書きにふさわしい、1ランク上の大人の話し方をぜひ身につけたいものだ。ただ軽いことと、重さを知った上のカジュアルさはにじみ出てくるものが違ってくるはずだ。周りからも一目置かれる存在となることは請け合いだ。
<POINT>
■ 肩書きと話し方がマッチしていない人が多い日本人
■ なりたい話し手の印象を決める
■ 日本の実業界は「重さ」を求めている
■ 話の説得力は「内容」「態度」「声」で決まる
■ 話すことより、関係を築くことを意識する
■ 瞬きを30秒以上止める訓練を
■ エグゼクティブは舌の筋トレも忘れずに
■ 漢字の読みは正確に。ことばの辞典でチェック
■ 重要なところはゆっくり話す
■ 数字や単位は正確に
■ データは出典元と発表時期を
■ 予測と願望を混同しない
■ スピーチ内容には3つの柱を持つ
■ 3つの因子「親しみやすさ」「活動性」「社会的望ましさ」で自分の印象を決める
■ 共通項が多いほど、人は関心を持つ
【newcomer&考察】
認める?認め無くない?! でも確実に「eスポーツ」時代がやってくる!
新元号もめでたく「令和」と決まった。いよいよ新しい時代の幕開けとなる。来年は東京オリンピックの開催。その舞台は整った感じだ。いまのところ国の強化策も順調のようで、大きなアクシデントがない限り、目標メダル獲得数もクリアできそうだ。
五輪に開催が近づくにつれて、スポーツ市場も盛り上がっているが、ふと世界を見渡すと、新たなスポーツ市場が急拡大している。それが「eスポーツ」である。
「eスポーツ」?と首を捻る方がいるとしたら、ぜひここで学んでおいてほしい。実は、もしかしたら数年後は夏のオリンピックの正式種目になる可能性があるからだ。2017年にはIOCが、eスポーツを正式種目として扱う検討に入ったことを表明している。
すでに、22年アジア競技大会ではeスポーツが正式種目に採用される。そこで存在感を示すためにも国を挙げてeスポーツ環境を整備しておく必要があるのだ。
eスポーツの市場規模は日本の株式会社Gzブレインの調査によると、2018年に国内が約48億円。これが2020年には約100億円くらいまで伸びると予測している。これに対して世界では17年段階で約700億円、約3億5,000万人が視聴しているという。市場規模も急増し、2012年になると1700億円規模に広がるという。またゴールドマン・サックスは22年までに約2900億円にパイが膨れると弾いている。
今後急速に伸びていくことは間違いなさそうだが、それでもゲーム市場の15兆円からすればまだまだ微々たるものだ。それほど躍起にならなくてもいい気もするが、問題は日本のeスポーツが世界から一周遅れていることだ。
そもそもeスポーツとは何か。ほかのゲームとは何が違うのか?
一般社団法人日本eスポーツ連合では、「eスポーツ(esports)とは、エレクトロニック・スポーツの略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称」としている。
つまりゲームのなかでも対戦、競い合う要素がないものはeスポーツとは呼ばないのである。たとえば、動物やペットの育成ゲームなどはこの対象とはならない。
現在世界中でeスポーツのタイトル戦は増えており、その賞金獲得で生活を立てているプロ選手も増えている。eスポーツが注目を集めるのは、市場規模に対して、トッププロの稼ぐ額が高いからだ。
調査会社の「esports earning」によれば、現在トップで稼ぐプロは年1億円というのはざらにいて、たとえば、ドイツのkurokyさんは3億5000万円ほど稼いでいる。
日本でもプロゲーマーが生まれているが、世界レベルからすると1桁違う。東大卒でプロゲーマーの「ときど」さんは国内トップランクの稼ぎ手だが、17年で約1,000万円ほどだ。
また2010年に国内初のeスポーツプロゲーマーとなった梅原大吾さんの場合、これまでの累計の獲得賞金は2,000万円程度。彼の場合は、スポンサーがついてるため、この程度の獲得賞金でやっていけたとも言える。多くのプロゲーマーの年収は300万円前後というから、決して楽な仕事ではない。
これは一にも二にも、eスポーツ環境が整っていないことにある。たとえば、アメリカでは年間約1000件の大会がある。数だけでなく、賞金額も高い。アメリカのゲーム会社のライアットゲームズが開発したマルチタイムオンラインバトルアリーナ(MOBA)を使って行われた「The InternationaI」の2014年大会では、優勝賞金が約2億2300万円、賞金総額が約5億5700万円と、なかなかの高額だったが、2017年大会では、優勝賞金が11億9,400万円、賞金総額が約27億1,400万円と、さらに高額になっている。
F1ほどの賞金額ではないが、少なくともゴルフの国内トーナメントやテニスの優勝賞金を上回る。
アメリカではすでにeスポーツのリーグが成立しており、転戦しながら戦いを続けている。さらにこうしたeスポーツのリーグでは個人戦もあるが、チームで団体となって戦うことが多い。まるでプロ野球の球団などのようにチームが各地の大会で戦うため、ファンがつきやすく、地域一体となった波及効果も生み出しやすい。
特筆すべきはこのThe Internationalでリーグ優勝しているのは、中国や韓国のチームが多いことだ。
アジアではeスポーツのプロはプロサッカー選手やアイドルよりも人気があり、とくに韓国は専門の高校や専門学部をもつ大学であるほど人気が高い。専門のテレビ局もあるし、専用のスタジアムもある。もちろん観客が観戦できる席も用意されており、観戦には入場料が要る。拠点をアメリカに移して活躍しているプロゲーマーも少なくない。
日本でも億を稼ぐプロゲーマーが複数出てくれば状況は一変するかもしれない。ただそうなるのは難しい。1つは法的制限があるから。景品表示法の関係で高額賞金が抑えられる可能性があるからだ。厳密にeスポーツの賞金がいくらまで、という制限は明記されていないが、消費者庁はゲームメーカー自身が賞金を出す大会でソフトの購買を前提とした場合は、商品の20倍まで、もしくは10万円という見解を示したことがある。あくまで消費者庁側の見解だったが、2016年にゲームメーカーのスクエア・エニックスが行ったゲームセンター向けの大会では当初賞金500万円に設定していた賞金額を、この見解を受け、10万円に引き下げている。
またそもそも勝ち負けに運の要素がつきまとうゲームに高額賞金を与えることは、刑法の賭博罪にあたるとの見解もある。
またそもそもeスポーツタイプのゲームが日本人に向いていないという指摘もある。海外で人気があるのは銃を使ったいわゆるシューティング型のRPGゲームで、日常で銃を持つ機会のない日本社会ではマジョリティとなっていない。
また日本のゲーム機が家庭用のコンソール型で、eスポーツ向けのPCをベースにしたキットになっていないこともある。
ただ、冷静に見ていくと日本がeスポーツ大国になる素地はまだまだある。1つはPCの普及率だ。スマホに押されてはいるが、ビジネスの主流はまだPCであり、家庭にもPCは普及している。
ここに来て国もeスポーツ支援を打ち出している。あとは法的な解釈論争だが、カジノを公認とするIR法が可決通過しているので、容認に傾く可能性は高い。
ちなみにeスポーツではどんな競技が公式競技となっているのかを、最後にいくつか紹介しておこう。
このほか、日本の「ぷよぷよ」や「テトリス」なども人気のeスポーツの代表だ。