コロナ禍で大変化!知らないと遅れる!! シンカする営業のいま
ネットやAIが進化すると人間の営業はだんだん要らなくなる……。多くの人はそう思っているのではないだろうか?
実際営業職を置かないものづくり企業などはあるし、増えている。とくにこの3、4年は新型コロナの影響もあって、従来の対面の営業がかけられなくなった。
代わってオンラインツールを使った営業が定着している。ネットを使ったセミナーをきっかけにした集客、ダイレクトメールをつかった営業なども増えている。
一昔前なら、新人を鍛えるための飛び込み営業がよく行われていたが、セキュリティや個人情報の漏洩などへの意識が高まるにつれて、ただ足で回るような営業スタイルは成り立たなくなった。
こうしたなか急速に定着しつつあるのが「インサイドセールス」である。
インサイドセールスとは、従来の内勤営業の新しい形態で、マーケティング活動で抽出した見込み客を外勤営業担当者に繋いで契約、購買の効果を最大化する役割を担う。とくにBtoB市場において有効だとされる。
一般的に営業は、見込み客の絞り込み、アポ取り、訪問、提案、契約もしくは購入までのプロセスを1人で行うが、インサイドセールスはマーケティングからの見込み客の絞り込みやアポ取り、提案のための調査・分析、提案づくりまでの営業プロセスの前半部を担当する。
展示会やイベント、自社サイトへのアクセスなどで得られたリードと呼ばれる見込み客の情報から商談機会を創出して外勤営業者へ繋いだり、新規顧客や休眠状態の顧客を分析し、購買頻度や購入金額などからランク分けを行ったり、あるいはBANT情報(Budget:予算、Authority:決裁権、Need:必要性、Timeframe:導入時期)からアプローチや提案を考え、実際にITツールを使って顧客にアプローチも行う。
インサイドセールスが注目されているのは、コロナ禍によって対面営業がしにくくなったことに加え、顧客情報を分析してその特性を“見える化”するMA(MarketingAutomation:マーケティングオートメーション)と呼ばれるITツールが増えたことも大きい。
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)、CRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)ツールがその代表とされ、日々進化している。CRMは一昔前から活用されるツールだが、最近はAIが利用され、より精度が高まっている。SFAは、顧客管理や案件管理、行動管理、売上予測実績管理、商談管理を行うことができ、ツールによっては、関わった人(人脈)の見える化ができる使い勝手のいい営業支援ツールだ。
こうしたMAツールが進化すればするほど、より精度の高い効率的な営業が実現できる。インサイドセールスの重要性が増していくことになる。
インサイドセールスの役割として大きいのが、リードの“育成”である。「ナーチャリング」と呼ぶもので、見込み客の関心・購買意欲を高め、商談・受注につなげる営業プロセスである。
そのため商材がいかに顧客にとって価値あるものなのかを学んでもらう必要性が出てくる。そのための学習素材を用意する必要もある。講演会やセミナー、動画、プレゼン資料、事例集などであるが、そういった学習素材の制作にもMAツールは極めて有効となる。
ちなみにインサイドセールスに呼応するのが「フィールドセールス」である。もちろんフィールドセールスにおいてもMAツールは必要となるが、インサイドセールスとの分業により、商談やクロージングに集中しやすくなり、そのスキルも磨かれていく。
営業・マーケティングのITツールのシンカは、別の営業手法も生み出している。
「インテントセールス」もその1つだ。インテントとは意図や狙い、目的を意味する英語で、顧客が意図して起こした行動にまつわるデータを集めて分析することで、その企業や顧客に合った営業アプローチを組み立てて、商談率や成約率の向上につなげる営業手法だ。
代表的なのが、企業サイトでの検索履歴や滞在時間などを調べて顧客の関心事を分析して、相手がどのような商材に関心があり、あるはどのような課題をもっているかを予測して、的確なチャンネルを使ってアプローチしていくやり方である。顧客の興味関心からスタートするためクロージングまでの確度が上がる。
顧客の心情を起点にした手法に、「カスタマーサクセス」というものもある。これは自社の製品やサービスを購入した顧客に対して、その利用によって望ましい効果や満足感を得られるようにサポートすること。いわゆるカスタマーサポートの1つだが、カスタマーサポートが顧客の問い合わせに対して受動的に応えるのに対して、カスタマーサクセスは、顧客の使用状況や希望を推察してより満足度の高い活用法などを提案したり、教えたりする。
SaaSやサブスクリプションなどが広がっている現在では、利用しているサービスが使い切れずにオーバースペックになっている企業を散見するが、こうした顧客にカスタマーサクセスを能動的にしかけることで、顧客企業の成長や成功体験につながり、さらに顧客とのエンゲージメントが強化されていく。
カスタマーサクセスの実施においては、顧客のロイヤリティを図るNPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)やCSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度スコア)、解約率などの指標をもとに展開される。
「ABM(Account Based Marketing)」も最近よく目にする営業ワードだ。これはインサイドセールス、インテントセールスとは逆に、営業とマーケティングの一体化を進め、とくに重要な顧客にフォーカスして、人材や資源を集中させてセールス活動を行う手法。個々の企業別にセールスを最適化するため、高い効果を得やすいが、効果を得るまでの時間をある程度要するのがABMだ。
営業といってもその手法は幅広く、そこに求められる技能も多岐にわたる。十分な理解と適切なITツールの組み合わせが求められる。少なくともターゲットの絞込みや顧客分析なくして営業はできない時代となっている。